精神科医師から見るうつ病と社会

最近のうつ病患者を見ていて感じるのは社会の構造改革の影響が出ているということです。うつ病の患者はリストラされた方の中からだけではなく、会社に残ることができた方からも出てきているのです。リストラによってダメージを受けるのはなにもリストラされた人だけではなく、残された人にもいなくなった人の分の仕事がのしかかるわけですからリストラされなかった人もダメージを受けます。体の健康だけではなくて、心の健康をどう維持していくのかということが大切になります。メンタルケアという言葉が社会でたくさん使われてくるようになりましたが、それを無しにして経済のことだけを考えて社会をみているとこうした状況に至ってしまうのだろうと思われます。日本では医療と経済を見る目というのが足りないと思っています。疾病による損失は、直接、間接どちらも合わせた損害を考えるとかなり大きなものになっていると思います。年間三万人に上る自殺者、その裏には三十万人の自殺未遂の人がいることを忘れてはいけません。精神科医はクリニックにやってきた患者だけをみるのではなく、このような社会の背景や、社会全体の大きな動きなど来院した患者に関係があるかもしれないバックヤードにも視野を広げていく必要があるのではないでしょうか。うつ病とストレスの関係というものが問題になっていますが、現代のうつ病はストレス社会とは別の次元に深刻化しているのではないかと考えています。うつ病を考えるということは日本全体を考えることになるのかもしれません。そうした中で治療にあたる精神科医には患者の背後にある日本という社会全体にも目を向ける必要があるかもしれません。

診療システムの改革

うつ病治療のクリニックはどこも込み合っています。一人の患者にかけられる時間が五分しかないというところもあるぐらいです。五分の診療時間では一言二言患者と言葉を交わし、薬の効果はどうか、副作用は出ていないかなどの確認で終わってしまいます。 

 これは医師の資質の問題ではなくシステムの問題が大きいのではないでしょうか。また精神科医の数に対してうつ患者の数が増えてきているというのも大きな問題です。外国の同じような事情を見てみるとやはり精神科医はそれほど多くないみたいです。外国では臨床心理士と精神科医がタッグを組んで治療を行っているみたいです。精神科医はマネージメントを行い、実際に患者に対して対応を行うのは心理士です。そしてそこから情報を得てまた治療方針を立てていくみたいです。日本ではそのようなシステムがないので、精神科医一人に負担が集中してしまい、一人につき五分しか取れないみたいな現状になってしまうのだと思います。少なくともうつ病の患者に対して症状や重症度によってきちんとスクリーニングをする必要が求められています。現状では症状が軽い方も重い方も人間関係の問題をかけている方も、家族の問題を抱えている方も時間がないことから同じ扱いになってしまっています。本来はそれぞれの環境、バックグラウンドに合わせた治療方法があるはずです。それぞれの患者に適切な治療、必要な薬剤を結び付けていくことが大切なんではないでしょうか。

転職の年齢制限

 中年に差し掛かると、転職に有利な要素が消滅してしまいます。ですから若い時分に挑戦した方が無難であることは間違いありません。しかし職務経験が申し分のない人は、例外的に採用されることもあります。彼らの多くは転職後に自分が出来ることを、具体的に提示して採用を勝ち取った人たちです。また、人脈の広さをアピールした人たちでもあります。中途採用の場合は特に、応募者の持つ人脈に注目が集まります。関わった業界が幅広ければ、採用に前向きになることは必至です。その他マネジメント経験等も、中年ならではのアピールポイントでしょう。
 同業への転職が異業種へのそれに比べて楽であることは確かですが、それでも前職で培ったスキルがそのまま転用できることを説明しなければなりません。説明と言っても、そのための準備に時間を掛けるようなものではなく、前職で活躍した時の感性を大切にして、転職先でビジョンを描いて見せるのです。新参の説明するビジョンは往々にして切り口が変わっているので、それだけでも注目を集めることが出来ます。
 中年が真剣に転職を決意した時、心配するのは自分の能力だけではありません。家族を説得する必要に迫られます。転職が珍しくなくなった現代においても、やはり反対する家族は少なくありません。転職には経済的なリスクが伴うからです。一般に転職直後は収入が減少します。将来の増収を当てにする他ありませんが、保証はどこにもありません。安定志向の強い家族はそれを嫌うのです。こうした家族を説得するためには、丁寧に、真剣に説明しなければなりません。勤め先のことをよく知らない家族に対しては、現職に留まり続けることのデメリットを伝えます。そして、それが転職によって消失することを論理的に話します。もちろん時間を掛けて説明しても、納得してくれないこともあるでしょう。その場合は押し切るのか、諦めるのかを決心します。押し切った場合は家族の絆が壊れないように、出来る限りのケアを施します。転職で余暇が増えるのであれば、その余暇を利用して旅行に出かけるのもよいでしょう。

医師の転職に関しても、中年であってもスキルを見てもらえることはあるかもしれません。

はじめから諦めず、まずはチャレンジしてみましょう。